古代史の中のコトバ

  1. はじめに
  2. 倭人伝
  3. 天皇名
  4. 地名
  5. 稲荷山出土鉄剣銘
  6. 古代語解釈の基礎

語源でとく古代大和(本)

  1. 書籍紹介
  2. 動画解説

真説―古代史

  1. 目子媛の「草香」
  2. 「橘」という勢力

談話室

  1. うましうるわし

古代語解釈の基礎

1.提示を表す「シ」

ハシ(端)という語だが、これは古くは一音語で「ハ」であった。ハシはもともとハだったものにシを付しているわけだが、このシは「~である」という提示を示す接尾辞と解される。ヒガシ・ニシという時のシもこの提示の用法と考えられ、これを風の意の「シ」などと説くものがあるが、では東と西からは風が吹くが北と南からは吹かないのかということになる。アカシ(明石)・イヅシ(出石)のような地名もアク(開く)・イヅ(出づ)を元に、これに「シ」を付して地名を作っている。
この「シ」は、本来は「ス」であったと考えられ、これは
  カラス  ウグイス  ホトトギス
などの語に現れる。だから、
  イシ(石) → イスのカミ(石上)
のように、イシがイスとなることがある。イシ(石)もイ(固体)シ(である)という語である。
  ヌシ(主)などの語を考える時にも、「シ=提示」だとすると、「ヌ」に意味の中核があることになり、これはヌ(泥、土地)であろうと推論されることになるわけである。

2.イの3用法

①クブツツイ=クブ(凹、窪)・ツツ(突)・イ(固体)、イシ(石)=イ(固体)シ(である)のような語にみられるように、「イ=固体」である。
②定点、目標として定めた地点
イヅ(出る)、イル(入る)、イタル(至)など
③強調辞となる
前につける場合=イブキ(イ吹く)、イ隠る、イ通ふ、など
後につける場合=君イしなくば、紀の関守イ留めなむかも

3.「~の」を表す語

ラ行で「~の」を表す
[ラ] マホ(真秀)ラ(の)マ(間)
    ナカ(中)ラ(の)イ(井)
    ワク(湧く・発生した)ラ(の)バ(葉)=若葉
[ロ] マホ(真秀)ロ(の)バ(場)
    ヲ(雄)ロ(の)チ(霊)
[ル] ツ(津)ル(の)ガ(処)
    シマ(島)ル(の)ミ(神)
    (動詞連体形語尾のルはこれであろう)
ナ行で「~の」を表す
[ナ]ミ(水)ナ(の)ト(処)
   カ(彼)ナ(の)タ(処)
   ケ(毛)ナ(の)モノ(物)→ケダモノ
[ノ]私の物 …今日の普通の用法
[ヌ]ツ(津)ヌ(の)ガ(処)
   ク(北)ヌ(の)ガ(処)
   ミヅ(水)ヌ(の)神
   島人(シマンチュ)ヌ(の)宝…沖縄方言